チャットボットを導入したい。けれど、何から手をつければよいのかが分からない。そう感じている方に向けて書いています。
ツールの比較記事はたくさんありますが、実際に困るのはその手前です。誰が何を決めるのか、社内で何を用意するのか、どれくらいの期間がかかるのか。ここが見えないまま進めると、必ずどこかで止まります。
この記事では次のことが分かります。
- 導入の全体像と、公開までにかかる期間の目安
- 7つのステップで何をするか、社内で誰が動くか
- 費用がいくらかかり、何にかかるのか
- 実際に導入した現場で、本当に起きること
- 途中で止まる4つのパターンと、その避け方
私たちデジタルレクリムは、チャットボットを自社で開発し、お客様に提供し、導入から運用まで支援しています。うまくいった話だけでなく、途中で止まった話も含めて書きます。
チャットボット導入の全体像
まず全体を押さえてください。導入は7つの段階に分かれます。
| 段階 | やること | 主に動く人 | 期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 目的を1つに決める | 決裁者・現場の責任者 | 1週間 |
| 2 | いま来ている問い合わせを集める | 現場の担当者 | 1〜2週間 |
| 3 | 型とツールを選ぶ | 担当者・提供元 | 1〜2週間 |
| 4 | 資料を渡す・想定質問を用意する | 現場の担当者 | 1週間 |
| 5 | 作る・設置する | 提供元 | 1〜2週間 |
| 6 | 試して直す | 担当者・提供元 | 1週間 |
| 7 | 公開して、育てる | 担当者 | 継続 |
公開までの合計は、おおむね1か月半から2か月です。
いちばん時間がかかるのは、実は「2」です
意外に思われるかもしれませんが、最も時間がかかるのはいま来ている問い合わせを集める段階です。
作る作業そのものは、いまの道具ならそれほど時間がかかりません。ところが「実際にどんな質問が来ているか」を集める作業は、社内でしかできません。ここを飛ばして進めると、後で必ず作り直しになります。
急ぐ場合はどこまで短縮できるか
資料が揃っていて、担当者が決まっていれば、2〜3週間で公開まで進めることは可能です。
ただし短縮できるのは「作る」部分だけです。問い合わせを集める段階と、公開後に育てる期間は縮められません。「来週から動かしたい」というご相談には、正直に申し上げてお断りするか、範囲をかなり絞ってご提案します。

ステップ1:目的を1つに決める
最初にして最も重要な段階です。ここが決まらないまま進むと、あとの判断がすべてぶれます。
目的の候補
- 問い合わせ対応の負担を減らす(電話・メールの件数を減らしたい)
- 営業時間外の取りこぼしをなくす(夜間・休日の問い合わせを拾いたい)
- 問い合わせや予約の件数を増やす(サイトから連絡が来ない)
- 社内の質問対応を減らす(総務・情報システムへの質問が多い)
- 離脱を防ぐ(買う直前で去られている)
欲張ると必ず失敗します
「問い合わせも減らしたいし、売上も上げたいし、社内の質問も減らしたい」──こうなると、設計が定まらず、どれも中途半端になります。
最初は1つに絞ってください。効果が見えてから広げれば十分です。実際、1つに絞ったお客様のほうが、結果として早く広げられています。
この段階で決めておくこと
| 決めること | なぜ必要か |
|---|---|
| 目的(1つ) | 設計のすべてがここから決まる |
| 設置する場所 | サイトか、LINEか、社内か |
| 予算の上限 | 選べる型が変わる |
| 運用の担当者 | 決めずに進むと、公開後に放置される |
| いつまでに公開するか | 逆算して段取りを組む |
4つ目の「運用の担当者」を、この段階で決めてください。後回しにすると、公開後に誰も見なくなります。理由は後の章で詳しく述べます。
ステップ2:いま来ている問い合わせを集める
導入の成否は、この段階で7割決まると考えています。
何を集めるか
直近1か月分の問い合わせを、内容ごとに書き出してください。集める先は次のとおりです。
- 問い合わせフォームから届いたメール
- 電話のメモ(残っていれば)
- LINEやSNSのやり取り
- 店頭や窓口でよく聞かれること(担当者の記憶で構いません)
集め方のコツ
完璧を目指す必要はありません。30個ほど集まれば十分です。
大事なのは、お客様が使った言葉のまま書き写すことです。「サービス内容についてのお問い合わせ」ではなく、「これって何ができるんですか」と書いてください。提供する側の言葉に置き換えると、実際の質問に当たらなくなります。
集めたら、数えて分ける
集めた質問を、次の3つに分けてください。
| 分類 | 内容 | チャットボットに任せるか |
|---|---|---|
| A:答えが決まっている | 営業時間、料金、アクセス、支払い方法 | 任せる |
| B:条件で答えが変わる | 「この場合はどうなりますか」 | 一部任せる |
| C:個別の相談 | お客様ごとに状況が違うもの | 人が対応する |
Aの割合を数えてください。これが導入効果の見込みになります。Aが半分以上あれば、導入する価値は十分にあります。Aが2割程度なら、期待するほどの効果は出ません。
この作業は外注できません
作業としてはお引き受けできますが、お客様が何を聞いてくるかを本当に知っているのは、日頃応対されているご担当者です。
私たちが最初にお願いするのも、この書き出しです。これがあるかないかで、仕上がりがまったく違います。

ステップ3:型とツールを選ぶ
ステップ2で集めた質問をもとに、どの型が合うかを決めます。
| 型 | 向いている状態 | 初期費用 | 月額 |
|---|---|---|---|
| ルール型 | 質問が10〜20種類に収まる | 0〜10万円 | 数千円〜3万円 |
| AI型(FAQ型) | 質問が多く、聞かれ方がばらつく | 10〜50万円 | 3万〜15万円 |
| 生成AI型 | 資料はあるが一問一答に作り直せない | 0〜30万円 | 1万円台〜 |
※2026年9月時点の当社調べによる目安です。
迷ったときの判断
ステップ2で集めた質問の数で決めるのが、いちばん確実です。
- 20個以下:ルール型で足ります。費用を抑えられます
- 50個前後で、資料が揃っている:生成AI型。資料を渡すだけで済みます
- 100個以上あり、一問一答の一覧をすでに持っている:AI型も候補になります
ツールを選ぶときに必ず確認すること
契約前に、次の5点を必ず尋ねてください。後から気づくと、作り直しになります。
- 自社の資料を何件まで登録できるか。上限を超えたらどうなるか
- 担当者への引き継ぎ機能は、どのプランに含まれるか
- 会話の量で費用が変わるか。変わるなら、繁忙期の試算を出してもらう
- 登録した内容を持ち出せるか。乗り換えのときに一から作り直しにならないか
- 会話の内容がAIの学習に使われるか。データはどこに保存されるか
型ごとの違いはチャットボットとは?種類・仕組み・料金を図解で、製品の比較はAIチャットボット比較25選で解説しています。

ステップ4:資料を渡す・想定質問を用意する
選んだ型によって、用意するものが変わります。
生成AI型の場合:資料をそのまま渡す
会社案内、料金表、よくある質問、サービス説明、規程──PDFやWordのまま渡せます。一問一答に作り直す必要はありません。
ただし1点だけ。古い情報が混ざっている資料は外してください。料金改定前の表が残っていると、そのまま古い金額を答えます。これは実際によくある事故です。
ルール型・AI型の場合:質問と回答を書く
ステップ2で集めた質問に、回答を書いていきます。書き方のコツは3つです。
- 回答は3文以内。長い回答は読まれません
- 同じ質問を、言い方を変えて2〜3通り登録する。「営業時間」だけでなく「何時まで」「何時から」も
- 答えたあとの案内を添える。「詳しくはこちら」「ご予約も承っています」の一言で、その後の動きが変わります
この段階で決めておく「答えない範囲」
意外に見落とされますが、答えさせない範囲を決めておくことが重要です。
医療における診断、法律の具体的な助言、金額の確定的な回答──間違いが許されない内容は、自動応答に任せてはいけません。「専門の担当者からご案内します」と人につなぐ設計にします。
私たちが医療機関のお客様を支援する際は、この線引きを最初に決めます。
ステップ5:作る・設置する
ここは提供元が進める段階です。お客様の側で発生する作業は多くありません。
社内で必要になること
- サイトへコードを貼る権限(制作会社に依頼している場合は、その連絡)
- ロゴや色の指定(サイトの雰囲気に合わせる場合)
- 担当者の確認(回答の言い回しが自社の言葉になっているか)
設置場所の決め方
どこに出すかで効果が変わります。全ページに一律で出すより、迷いが生まれる場所に絞るほうが効きます。
| 目的 | 置くべき場所 |
|---|---|
| 問い合わせを減らす | よくある質問ページ、サービス紹介ページ |
| 問い合わせを増やす | 料金ページ、フォームの手前 |
| 予約につなげる | アクセス・診療時間のページ |
| 離脱を防ぐ | 商品ページ、カート画面 |
また、ただ置くだけでは押されません。「料金でお悩みの方はこちら」「24時間ご予約を承ります」のように、何を聞けばよいかを添えてください。
ステップ6:試して直す
公開の前に、社内で一度動かします。ここで見るのは3点です。
1. 想定した質問に、正しく答えるか
ステップ2で集めた質問を、実際に投げてみてください。全部やってください。30個なら30分で終わります。
2. 答えられない質問で、どうなるか
わざと的外れな質問を投げてみてください。「分かりません」で終わるなら、設計が足りていません。問い合わせフォームや電話番号を案内する、連絡先を聞いておく、といった逃げ道を必ず用意します。
3. 誤った内容を答えていないか
生成AI型でとくに重要です。資料に書かれていないことを、それらしく作って答えていないかを確かめてください。
実際、私たち自身も最初の設定で、対応していない内容を「できます」と答えてしまったことがあります。「資料に書かれていないことは答えず、お問い合わせくださいと案内する」という指示を入れて解決しました。
ステップ7:公開して、育てる
公開した時点は完成ではありません。ここからが本番です。
公開後にやること
| 時期 | やること | 時間の目安 |
|---|---|---|
| 1週間後 | 会話のログを全部読む | 1時間 |
| 1か月後 | 答えられなかった質問を数え、資料を足す | 2時間 |
| 3か月後 | 使われていない質問を整理する | 1時間 |
| 以降は毎月 | 答えられなかった質問を確認する | 1〜2時間 |
月1〜2時間です。この時間を取れるかどうかが、半年後の状態を決めます。
【当社の運用実績から】導入の現場で本当に起きること
ここからは、実際に導入を支援してきた立場から、事前にはあまり語られないことをお伝えします。
1. 最初に用意した質問の多くは使われない
正直に申し上げます。私たちが最初に用意した想定質問のうち、実際によく使われたのは一部でした。
「こう聞かれるだろう」と考えて丁寧に作った質問がほとんど使われず、想定していなかった聞かれ方が次々に来ました。
これは設計が悪かったというより、提供する側と使う側で言葉が違うということです。私たちは「サービス内容」と書きますが、お客様は「何ができるの」と聞きます。
だから、公開前に完璧を目指すより、ある程度で出して実際の質問を見るほうが早く仕上がります。ステップ4で「30個ほど」と申し上げたのはこのためです。
2. 会話のログが、サイトの弱点を教えてくれる
公開後に最初にやるべきことは、会話のログを読むことです。
あるお客様のサイトでは、私たちが重要だと考えていた項目より、料金の細かい条件に関する質問が圧倒的に多いことが分かりました。サイトの説明が不足していたということです。
これはチャットボットの改善だけでなく、サイトそのものの改善につながります。ページを直せば、その質問自体が来なくなります。
3. 答えられなかった質問こそ価値がある
管理画面には、たいてい「回答できなかった質問」の一覧があります。ここを見ない運用は、半分しか使えていません。
答えられなかったということは、お客様が知りたいのに、自社のどこにも書かれていないということです。それはチャットボットの不足であると同時に、サイトの不足でもあります。
4. 効果は「問い合わせが減った」だけではない
導入の目的として最も多いのは問い合わせ対応の削減ですが、実際に運用してみると、お客様の言葉が毎日集まってくることの価値のほうが大きいと感じるお客様も少なくありません。
あるクリニックでは、会話のログから患者さんが実際に何を気にしているかが見えてきました。予約前に確認したいこと、不安に思っていること──アンケートでは出てこない率直な問いが並んでいました。
これは案内の作り方、サイトの書き方、当日の説明の仕方にそのまま反映できます。
導入の効果を、どう測るか
先に申し上げておきます。導入前に測っておかないと、効果があっても分かりません。これが最ももったいない状態です。
導入前に控えておく3つの数字
| 測るもの | どこで分かるか | なぜ必要か |
|---|---|---|
| 月の問い合わせ件数 | メールの受信数、電話のメモ | 減ったかどうかの基準になる |
| 問い合わせの内訳 | ステップ2で分類したA・B・C | 減らせる上限が分かる |
| 営業時間外に来た件数 | メールの受信時刻 | 取りこぼしの量が分かる |
この3つを、導入の1か月前から数えておいてください。手帳に正の字を書くだけで足ります。精密である必要はありません。
公開後に見る数字
管理画面で見られるのは、たいてい次のような数字です。
- 起動された回数:何人が話しかけたか
- 会話が成立した割合:話しかけたあと、答えまで進んだ割合
- 答えられなかった件数:これが改善の材料になります
- 問い合わせや予約につながった件数:目的がこれなら最重要
いちばん見るべきは「答えられなかった件数」
起動回数が伸びていると安心してしまいますが、本当に見るべきは答えられなかった質問です。
ここが多いということは、期待されているのに応えられていないということです。逆に言えば、ここを埋めるだけで結果が変わります。資料を足す、言い回しを直す。それだけで済むことがほとんどです。
数字を約束されたら、その根拠を尋ねる
提案を受ける際に「問い合わせが○%減ります」「CVRが○倍になります」と言われることがあります。
効果の大きさは、業種・問い合わせ件数・設計の丁寧さによって大きく変わります。数字を示されたら、それがどういう条件での話かを必ず確かめてください。自社と条件が違えば、その数字は当てはまりません。

社内での説明・稟議の通し方
導入を担当される方の実際の悩みは、多くの場合ここにあります。上や隣の部署にどう説明するか。
説明が通らない典型的な理由
「AIチャットボットを導入したい」という説明では、まず通りません。何が良くなるのかが伝わらないためです。
通りやすいのは、次の順で組み立てた説明です。
- いま、何にどれだけ時間を使っているか(月の問い合わせ件数と、1件あたりの対応時間)
- そのうち、同じ内容の繰り返しがどれだけあるか(ステップ2で分類したAの割合)
- その分を引き受けさせると、何時間空くか
- いくらかかるか(初期費用+月額+社内の手入れ時間)
- 誰が担当するか
1と2は、ステップ2の作業がそのまま材料になります。だからあの作業は省けません。
数字は控えめに出す
「問い合わせが半分になります」と言い切ると、そうならなかったときに信用を失います。
それより、「同じ内容の質問が全体の◯割ある。まずここを引き受けさせる」という言い方のほうが通りますし、実際にその通りになります。
「まず小さく始める」が最も通りやすい
いきなり全社で使う前提にすると、関係者が増えて話が止まります。
実際に通りやすいのは、次のような形です。
- まず社内向けに使う。お客様の目に触れないので、失敗しても影響が小さい
- 1つのページにだけ置く。料金ページだけ、よくある質問ページだけ
- 3か月やってみて、続けるか決める。期限を切ると通りやすくなります
効果が見えてから広げれば十分です。最初から完成形を目指す必要はありません。
反対されやすい点と、その答え方
| よく出る反対 | 答え方 |
|---|---|
| 「機械的な対応で印象が悪くなる」 | 答えられない質問は人につなぐ設計にする。むしろ待たせないほうが印象は良い |
| 「誤った回答をしたら責任問題になる」 | 資料に書かれていないことは答えず、問い合わせへ案内する設定にできる |
| 「個人情報を扱って大丈夫か」 | 会話内容がAIの学習に使われるか、データの保存先を契約前に確認する |
| 「結局誰も使わないのでは」 | 1ページに絞り、3か月で判断する。起動回数は管理画面で分かる |
| 「運用する人がいない」 | 月1〜2時間。取れないなら手入れまで任せられる相手を選ぶ |
導入の進み方(3つの例)
実際の進み方を、業種の違う3つの例でご紹介します。金額や件数は伏せますが、経過はそのままです。
例1:クリニック ── 電話の取りこぼしを減らしたい
困っていたこと。診療中は電話に出られず、留守番電話にも残されずに切れてしまう。夜間の問い合わせは翌日以降になる。
やったこと。目的を「営業時間外の取りこぼしをなくす」1つに絞りました。集めた質問は診療時間、料金、予約方法、駐車場、初診の流れなど。答えてよい範囲を最初に線引きし、症状に関する質問には答えさせず「受診時にご相談ください」と案内する設計にしました。
どうなったか。会話のログを読んで分かったのは、患者さんが予約の前に確認したいことが、こちらの想定と違っていたことでした。私たちが重要だと考えていた項目より、費用の細かい条件に関する質問が多く並んでいました。
結果として、チャットボットの調整だけでなく、サイトの料金ページそのものを書き直すことになりました。
例2:通販サイト ── 買う直前で離脱されている
困っていたこと。カートに入れたあとの離脱が多い。理由が分からない。
やったこと。商品ページとカート画面の2か所に絞って設置しました。「サイズ選びで迷ったらこちら」と一言添えたところ、起動される回数が大きく変わりました。ただ置いただけのときは、ほとんど押されていませんでした。
どうなったか。集まった質問の多くは、サイズと送料の条件に関するものでした。どちらも商品ページに書いてあったのですが、書いてある場所が分かりにくかったということです。
例3:社内利用 ── 総務への質問が多すぎる
困っていたこと。経費精算のやり方、有給の申請手順、就業規則の内容。同じ質問が繰り返し総務に来る。
やったこと。お客様向けではないため、比較的気軽に始められました。規程と手順書をそのまま読み込ませ、社内のポータルに設置しました。
どうなったか。公開して分かったのは、そもそも規程のどこに何が書いてあるか、社員が把握していなかったということでした。文書は整備されていたのに、たどり着けていなかったのです。
この例のように、社内利用は最初の一歩として選びやすいという利点があります。お客様の目に触れないため、試しながら進められます。
導入が止まる4つのパターン
実際に見てきた「途中で止まる」原因を4つ挙げます。どれも、事前に知っていれば避けられます。
パターン1:問い合わせを集める段階で止まる
最も多い止まり方です。「直近1か月の問い合わせを書き出してください」とお願いしたまま、数週間が過ぎる。
原因は、担当者が通常業務と兼務しているためです。優先度が下がると、いつまでも進みません。
避けるには、集める範囲を絞ることです。「1か月分すべて」ではなく「直近20件」「メールだけ」と決めれば、1〜2時間で終わります。完璧を求めないでください。
パターン2:関係者が増えて決まらなくなる
途中から関係部署が増え、「うちの部署の質問も入れてほしい」となって設計が膨らみます。
避けるには、ステップ1で目的を1つに絞り、関係者を最小限にすることです。広げるのは効果が見えてからで構いません。
パターン3:安いプランで契約し、作り直しになる
月額の安さで選んだところ、自社の資料を読み込ませる機能が上位プランにしかなく、結局作り直しになった、という例です。
最初に払った費用と、作り直しの費用の両方がかかります。ステップ3で挙げた5つの確認事項を、契約前に必ず尋ねてください。
パターン4:公開後に誰も見なくなる
設置は提供元がやってくれます。しかし月に一度ログを見て手を入れる作業は、社内の誰かがやることになります。
ここを決めずに導入すると、3か月ほどで誰も見なくなり、答えられない質問が溜まったまま放置されます。そして「使えなかった」という結論になります。
だからこそ、ステップ1で「誰が、月に何時間、これを見るか」を決めてください。その見通しが立たないなら、手入れまで含めて任せられる相手を選ぶほうが確実です。

導入にかかる費用
費用は「初期費用」と「月額費用」に分かれます。
| 費目 | 内容 | 目安 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 設計・設定・資料の読み込み・設置 | 0〜50万円 |
| 月額費用 | 利用料・保守 | 数千円〜数十万円 |
| 運用の人件費 | 社内で手入れをする時間 | 月1〜2時間分 |
表に出てこない費用に注意する
月額の安さだけで比べると、後から足りない機能が出てきます。とくに次の4つは、別料金になっていることがあります。
- 資料の登録数を増やす
- 担当者への引き継ぎ機能
- 会話ログの分析画面
- 複数人での管理
必要な機能をすべて含めた総額で比べてください。費用の内訳と見落としやすい追加費用は、チャットボット費用の相場と内訳|2026年版・隠れコスト7選で詳しく解説しています。
まず無料で試すという選び方
いきなり契約せず、無料の枠で試してから決めるという進め方もあります。実際に動かしてみないと、自社に何が必要かは分かりません。
無料で試せる範囲と、そのときにやっておくべきことはチャットボットは無料で使える?無料ツール10選と注意点にまとめています。
業種別に見る導入の進め方
クリニック・士業
診療時間、料金、予約方法への質問が中心です。答えてよい範囲の線引きを最初に決めることが、他の業種より重要になります。診断や具体的な助言には踏み込ませず、来院・相談へつなぐ設計にします。
通販・小売
配送状況、サイズ、返品条件への質問が繰り返し来ます。商品ページとカート画面に置くのが効きます。詳しくはECのチャットボット導入|費用相場とカゴ落ち対策をご覧ください。
不動産・住宅
検討期間が長く、夜間や休日に調べる方が多い分野です。営業時間外の取りこぼしをなくすことを目的に据えると効果が見えやすくなります。
法人向けサービス・メーカー
担当者が社内説明のために情報を集めている段階が多いため、資料請求や問い合わせへつなぐ設計にします。その場で結論を出す方はほとんどいません。
社内での利用
経費精算、有給申請、規程の確認など、総務や情報システムに集中する質問を引き受けます。お客様向けより気軽に試せるため、最初の一歩として選ばれることが増えています。詳しくは社内ヘルプデスク向けチャットボット導入ガイド2026をご覧ください。
導入を見送ったほうがよい場合
正直に申し上げると、すべての会社に必要なものではありません。
問い合わせが月に数件しかない
その数件に人が丁寧に応対するほうが、結果として良い印象が残ります。費用に見合いません。
目安は月20件以上、かつステップ2の分類で「A:答えが決まっている」が半分以上です。
一件ごとの対応がまったく違う
お客様ごとに状況が異なり、毎回ゼロから話を聞く必要がある業種では、自動応答が扱える範囲が限られます。
ただしこの場合でも、相談の入り口としてなら役に立ちます。基本的な情報を先に聞いておき、担当者に渡す使い方です。
渡せる資料が何もない
生成AI型は資料を読み込ませて答えさせる仕組みです。渡せる資料がなければ、答えようがありません。
この場合、まず社内の情報を文書にまとめるところから始めることになります。手間ですが無駄にはなりません。まとめた資料は、サイトにも営業資料にも社内教育にも使えます。
月1〜2時間の手入れができる見通しが立たない
誰も見なくなることが分かっているなら、導入は見送るか、手入れまで含めて任せられる相手を選んでください。
よくある質問
Q1. チャットボットの導入にはどれくらいの期間がかかりますか?
A1. 公開までおおむね1か月半から2か月です。資料が揃っていて担当者が決まっていれば2〜3週間まで短縮できますが、実用的な精度になるまでには公開後さらに1〜3か月かかります。
Q2. 導入費用の相場はいくらですか?
A2. 初期費用が0〜50万円、月額が数千円〜数十万円です。型と含まれる作業によって大きく変わります。必要な機能をすべて含めた総額で比べてください。
Q3. 社内で何を用意すればよいですか?
A3. 直近の問い合わせの書き出し(30個ほど)、会社案内や料金表などの資料、サイトへコードを貼る権限、そして運用の担当者です。最も時間がかかるのが問い合わせの書き出しです。
Q4. 導入の担当者は何人必要ですか?
A4. 1人で足ります。むしろ関係者が増えるほど決まらなくなります。ただし決裁者の合意は最初に取っておいてください。
Q5. 導入して、どれくらい問い合わせが減りますか?
A5. 業種・件数・設計の丁寧さによって大きく変わるため、数字をお約束することはできません。目安としては、答えが決まっている質問の割合が、そのまま削減できる上限になります。
Q6. 途中でツールを変えることはできますか?
A6. できますが、登録した内容を持ち出せるかどうかで手間が変わります。契約前に必ず確認してください。持ち出せない場合、乗り換えのときに一から作り直しになります。
Q7. 答えられない質問が来たらどうなりますか?
A7. 設計次第です。「分かりません」で終わらせず、問い合わせフォームや電話番号を案内する、担当者に引き継ぐ、連絡先を聞いておく、といった逃げ道を必ず用意してください。
Q8. 導入すれば問い合わせはゼロになりますか?
A8. なりません。チャットボットが引き受けられるのは答えが決まっている質問です。個別の相談は残ります。むしろ、そこに人の時間を使えるようになるのが本来の効果です。
まとめ
チャットボットの導入は7つの段階に分かれ、公開までおおむね1か月半から2か月かかります。
このうち最も重要なのは、ステップ1で目的を1つに絞ることと、ステップ2で実際に来ている問い合わせを集めることです。ここが決まっていれば、あとの判断は自然に決まります。逆にここを飛ばすと、必ずどこかで止まります。
そしてもうひとつ。公開した時点は完成ではありません。月1〜2時間、答えられなかった質問を見て手を入れる作業を続けて、はじめて役に立つ状態になります。
その担当者を、導入を決める前に決めてください。これが、うまくいくかどうかを最も大きく左右します。
あわせてお読みください。


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